馬ヌメ革がギターストラップの耐久性を高める理由|職人が語る素材選び

馬ヌメ革がギターストラップの耐久性を高める理由|職人が語る素材選び

ストラップの「端」がヘタってきた…と感じたことはありませんか?

ギターストラップを長く使っていると、真ん中よりも先に「ギターと接する両端」がヨレたり、折れ曲がったり、ひどいときには切れそうになってきた——そんな経験はありませんか?

実はこれ、多くのストラップが避けて通れない弱点です。ストラップピンに何度も抜き差しする端の部分には、演奏中の楽器の重さと着脱の負荷が集中します。ここが弱いと、どれだけ本体がしっかりしていても、ストラップ全体の寿命はそこで決まってしまうんです。

708worksがこの問題にどう向き合っているのか。今回は「馬ヌメ革」という素材の話を軸に、耐久性の話を具体的にお伝えします。

なぜ端の部分だけ「馬ヌメ革」なのか

708worksの三つ編みストラップ「Triad(トライアド)」は、実は最初のプロトタイプの頃、端の部分も三つ編みと同じ牛革を延長して使っていました。作った本人であるわたし自身のバンドのライブで何度も愛用していたのですが、使い続けるうちに課題が見えてきました。

着脱を繰り返す端部には、牛革よりも馬ヌメ革のほうが明らかに適していたんです。そこで、ストラップ本体とは別に馬ヌメ革のパーツを製作し、両端に取り付ける仕様へと変更しました。素材も工程も増えるのでコストは上がりましたが、それ以上に耐久性と使い勝手が向上したメリットが大きく、今ではこの改良は正解だったと確信しています。

 

馬ヌメ革を使ったギターストラップの端部
Photo by Anna Hecker on Unsplash

 

牛革と馬革、どちらが優れているという話ではない

よく「牛革と馬革はどっちがいいの?」と聞かれますが、これは単純な優劣で語れるものではありません。革は素材そのものだけでなく、使う部位・なめし方・表面の仕上げによって性質が大きく変わります。だからこそ、それぞれの特性を見極めて適材適所で使い分けることを708worksのポリシーにしています。

Triadの両端に使っている馬革は、顔料仕上げによるコシの強い革です。実際に試作と使用テストを重ねるなかで、折れ曲がりに強く、ギターへの着脱を繰り返してもヨレにくいことが分かりました。ストラップピンに抜き差しする端部には、まさにうってつけの性質だったわけです。

「経年変化」で使い分けるという視点

一方で、顔料仕上げは革の表面に塗料を乗せる仕上げ方法のため、使い込むことによる色味や風合いの経年変化は比較的少ないという特徴もあります。

そのため、経年変化そのものを楽しんでいただきたいウロコストラップ「folklore(フォークロア)」のような通常モデルでは、あえて馬ヌメ革を全面に使うことはほとんどありません。革の「良し悪し」ではなく、それぞれの革が持つ個性を理解したうえで、製品の用途や求める性能に合わせて素材を選ぶ。これも耐久性を確保するうえで欠かせない考え方です。

 

Triad トライアド|程よい主張の三つ編みギターストラップ|概要 Triad(トライアド)ストラップは、3本の牛革ベルトを三つ編みにしたデザインが特徴で、シンプルながらも洗練された
Triad トライアド|程よい主張の三つ編みギターストラップ|概要 Triad(トライアド)ストラップは、3本の牛革ベルトを三つ編みにしたデザインが特徴で、シンプルながらも洗練された

 

三つ編みのシンプルで洗練された見た目に、端部だけ馬ヌメ革でしっかり補強する。この「見た目」と「長く使える強さ」を両立させたのがTriad トライアド|程よい主張の三つ編みギターストラップです。何度も着脱するライブ派の方にこそ、その差を実感していただけると思います。

耐久性は素材だけでなく「下処理」でも決まる

耐久性を支えているのは素材の選定だけではありません。708worksでは全製品で、使用する革の裏面(床面)の毛羽立ちを抑える処理を欠かさず行っています。

具体的には、革の裏面全体にハンドクリームのような質感の専用ケミカルを塗布し、半乾きになったタイミングでガラスや木製の棒で丁寧に擦っていきます。これで毛羽立っていた繊維が寝て、裏側がなめらかで美しい質感に仕上がります。

この工程を怠ると、手に取ったときの質感だけでなく、製品の耐久性そのものが損なわれてしまいます。難しい作業ではありませんが、薬品が革の表面に付着すると風合いを損ねてしまうため、一枚一枚慎重に気を配りながら進めています。

 

「これだ」と思える素材だけを、適材適所で

これまで素材選びでは数え切れない失敗もしてきました。引っ張り強度が足りない革、色落ちが激しい革、組み上げたときに雰囲気がしっくりこない金具——。だからこそ新しい素材を採用するときは必ず製品テストを行い、耐久性や使い心地を確認しています。そして最後は、完成品を手にしたときの直感も大切にしています。気に入らない素材は使わない。これが708worksで一貫して守っている姿勢です。

もしあなたが「端がすぐヘタるストラップ」に悩んでいるなら、着脱の多い部分にしっかり強い革を使ったモデルを選ぶだけで、その悩みはずいぶん軽くなるはずです。長く付き合える一本を探している方は、ぜひTriadを候補に入れてみてください。あなたの相棒として、何度もステージをともにできる一本になれば嬉しいです。

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